それもこれも春だから?
         〜789女子高生シリーズ

         *YUN様砂幻様のところで連載されておいでの
          789女子高生設定をお借りしました。

  


今年はなかなか判りやすい“暖冬”で。
冬場に夏日とか、それはないだろという暖かさにまったりしたかと思えば、
そのすぐ翌日が猛烈吹雪とか、一応の寒さが襲い来もしたが。
暖冬って言ったじゃないのよぉと叫ぶ声が届くのか、
そんな極寒も1週間と続かず、
すぐにも“上着の要らない陽気になりましたね”なんて
アナウンサーのおねいさんが微笑むような気候へなだれ込むのが定番で。

 「スキー場がなかなか営業できないと困っておられましたよね。」
 「雪まつりに雪が足りるのかってのも話題になってましたよね。」

それを埋め合わせた豪雪もドカンと降りはしたけれど、
一点集中という感は否めない勢いの良さで。

 「じわじわ寒いのと、二日だけ1週間分降って吹雪くのと。」
 「そんな選択自体がちょっと嫌だなぁ。
  …あ、ヘイさん、そこの角まで引っ張ったら全消し出来るよ。」
 「おおお、やったぁvv 50面クリア! って、七さんもっと進んでるの?」

桜はまだだが、どこからか早咲きの沈丁花の甘い香りが漂う、
ここは某女学園の 豪奢な正門のちょい傍ら辺り。
吹きっ晒しの屋外に出して使うからか、
汚れてもざっと拭えるよう、どこにでもありそうな長テーブルを持ち出したのではあるが。
純白のクロスで覆った天板には大きめの塗りの文箱が並べられ、
そこへと案内用のしおりや何や、
今日の善き日の式典にあたってのイロハをつづった印刷物が揃えてあり。
本日ご来場の方々へ、おはようございます、おめでとうございますお姉さまと、
それは麗しい笑顔でまず最初のご挨拶をする係にあたっていたのが、
どのお姉さまにも知れ渡っている、当代で一番人気の三人娘たち。

 『あらあら、白百合さんだわ。受付で真っ先に逢えるなんて嬉しいvv』
 『ひなげしちゃんたら、今日も可愛くてvv』
 『紅ばらさんも お澄まししててお綺麗よねぇv』

水蜜桃のように瑞々しい、青い色香と美貌とか
楚々とした落ち着きが知性を匂わす、玲瓏透徹な麗しさとか、
降ったばかりの淡雪のように、か弱くも清楚清廉な愛らしさとか。
いづれが春蘭秋菊か、
どのご令嬢もそれはそれは粒よりの美少女ぞろいの当女学園において。
群を抜いて個性や存在感が際立っておいでという、
別名“三華様”と呼ばれておいでの、在校生代表、二年生のお3方。

 『年下へも年上へも区別なく人当たりがよくて、』

それは優しく包容力もあり、花のような美貌は誰しもが憧れる聖女様。
剣道部での指導っぷりも評判の、白百合様こと草野さんに。

 『ちょっぴり怖いくらいだけどvv』

鋭角な美貌に けぶるような金髪がようよう映える、
寡黙で冷静、近寄りがたい気品に満ちた、
バレエの精鋭にして、ホテルJの跡取りという、社交界の紅ばら様こと三木さんに。

 『ベビーフェイスに似合わぬグラマーさんで、』

蜜掛けしたよな無邪気な笑顔は、だがだが、内に秘めたる知性への強固なガードか。
今時の色彩感覚で飾ったノーパソで、叡知の最高峰へもあっさりとにじり寄れちゃう
ひなげし様こと林田さんだったりし。

 「つか、私のチャームポイントは相変わらず胸ですか
 「まあまあ、ヘイさん。」
 「デカいのはホントだ。」
 「…
 「これこれ、久蔵殿も。」

ヒサコさまの珍しい茶々はともかく、(笑)
胸のサイズも体格も、運動能力もお勉強の得意分野も、
ついでに彼氏のタイプも、それぞれがバラバラな、
だからこそバランスが取れてるグループパラメータになっておいでの3人娘。
今日のところは卒業式の受付なんぞを割り振られたようで。
先週末から今週の頭に掛けて、またぞろ凄まじい寒波に襲われたものの、
おひな祭りは暖かないいお日和となったし。
そこからぐいぐいと気温も上がって、
今日の良き日は朝から晴天、気温も花見時というから
巣立っていかれるお姉さま方へは最高のはなむけ。
お友達や父兄と共に登校していらした少しほど大人びたお姉さま方へ、
ご挨拶と共にしおりを手渡し、
御署名いただいた来賓や父兄の皆様の控室の方向を、優雅に腕を伸べて案内したり、
卒業生へは お胸へのお花つけ隊が待っておりますと、やはりそちらへ手を伸べて。
来賓への一番最初の仕分けを担っておいで。
今季の看板、一番人気のお嬢様がたでのお迎えは、
どの顔ぶれへもウケがよく。
一番大きい講堂で催される式典を前に、
そろそろほとんどのお姉さま方が登校し終えたらしい様相なのを感じつつ、
がらんと人影もなくなった受付にて
机の下でコッソリと
暇つぶしにスマホをいじったり文庫本を開いたりしていたお嬢様がただったれど。

 「…お綺麗よねぇ。」
 「ええ。ほら、紅バラ様の髪を白百合様が。」
 「ひなげし様も髪を押さえる指先の優雅なこと。」

お花つけ隊の一年生たち、
そちらは暇なんて持て余してません、
憧れのお姉さまたちをこそこそと観察するのに忙しい。
何を話しておいでか、声までは聞こえぬが、
文庫本から目も上げず、だがだがくすりと笑った三木様なのがレアものだとか、
まだ蕾も堅い、傍らの桜の枝を揺らす風の悪戯で、
サラサラの髪を遊ばれては
白百合様に直していただいておいでのひなげし様が愛らしいとか。
こっそりこそこそ、互いをつつき合いつつ可愛らしくも囁きあっておいでだが、

 「通学路の監視カメラに不審人物は映ってない?」
 「今のところはね。でも、裏の駐車場にちょっと気になるカバンが。」
 「よし。」
 「ああこら。観に行ってくる、じゃありませんて、久蔵殿。」

同じセーラー服、同じ年頃のお嬢さんたちでも、
実のところ中身のややこしい錯綜ぶりでは
一味も二味もレベルが違うお姉さま方。
決して安易に近づいてはなりませぬと、
シンパシィだからというより老婆心から告げてやりたい、
それぞれでどっかにおわす彼女らの保護者の皆様方。
早く現れて釘を刺しておかないと、
またぞろ何かを見つけたらしいのが駆け出しそうですよ?(う〜ん)


…そしてご近所のとあるお宅では、

 「さすがに卒業式では現れないかしらね。」

何かしらの行事ごと、時々こちらのお宅の高い石の塀を、
それは軽快にト〜ンっと飛び越えてく人影がなくもなく。
セーラー服のままな時が多いので ご近所のあすこの生徒さんらしいのだけれど。
ある日はフリルがいっぱいの中世のお姫様スタイルの、
ある日はやはり中世の、だがだが騎士様スタイルのお嬢様が、
何処からともなく勢いに乗って駆けて来ては、
少し低めの柵を足場に ほんの一歩の踏み切りで、
自身の身長以上の塀の上へと飛び上がり。
体操競技の跳馬よろしく、
その身を真横にぶん回してのそりゃあお見事に飛び越えてく風景が
恒例になっておいでだとのことで。

 「秋口なんて、三人も次々に飛び越えていかれたしねぇvv」

お庭を望める縁側廊下にお気に入りの肘掛椅子を出し、
ほこほこと日向ぼっこ中の初老の奥様が微笑っておいでだったれど。
そんな暢気に構えないでほしいと、
がっくし肩を落としておいでの保護者の皆さんもおいでなこと、
ご存知じゃないのが何ともかんとも…。




   〜Fine〜  16.03.05


 *三月もまた極寒で幕を開けましたが、
  そのあとは初夏並みの陽気になって。
  卒業のシーズンにはめでたいような、雪崩とか花粉が心配なような。
  どう転んでも何か言われる、困った春の初めですね。(苦笑)

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